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発見











静かな車の振動が、下腹部に心地よい。沢田は、緩やかに流れる景色に目を向けていた。平日だが、メインストリートには大勢の買い物客でごった返していた。渋滞で、車はゆっくりとしか進まない。
いつもなら、こんな道は避けるんだけどね。防音された車の中は、おそらく騒がしいであろう外とは正反対に静まり返っていた。…特に、用事も無く。なんだか気が向いたので、ドライブ。隣の運転席には、いつもの右腕ではなく、雲雀がいた。


「……まだ仕事溜まってるんじゃなかったっけ?」


静かに雲雀が口を開いた。沢田が景色から目をそらさず、答える。


「んー、なんとなく気が向いたから」
「ふーん、お気楽だね」
「だって獄寺くん居ないし」
「………そんな事ぐらいでサボらないで欲しいんだけど」


そういいつつ、運転席に収まっている。まあ、雲雀さんも雲雀さんで、気を使ってるのかもしれない(この人が気を使うなんて、この上なく珍しいけど)。獄寺くんは、大事な取引で夕方まで戻らない。…別に、それが理由で雲雀さんを引っ張り出してまでドライブにでたわけじゃないけど。
なんとなく、今ドライブにでた方がいい気がする。そう自分が感じ取ったから、わざわざこの忙しいのに、渋滞のメインストリートまで出てきた。それだけだ。


「彼、まだ見つからないんでしょ」
「……リボーンはそう簡単に見つからないでしょうね」
「未だにどうして彼が牛を連れて逃げたのか分からないね」


ハンドルを握ったまま、器用に両肩を上げる。沢田は、やっぱり景色から目をそらさない。


「まあ、事実は事実ですし」
「だろうけど、よくそんな思い切ったことできたよね」
「……そこまで、頭回らなかったんじゃないですか?」
「彼がそんな頭悪い事するとは思えないんだけど」


雲雀さんはリボーンを少々買いかぶりすぎている。まあリボーンの実力はもちろん、雲雀さんが高く買うくらいはあるんだけれども。沢田は小さく溜息をついた。目が回るくらいの、大勢の人たちがみなそれぞれに表情を浮かべて、ゆっくりと視界の端に流れていく。
…リボーンのメンタル面については、いろんな意味で強いけど。反面脆いのだ。…今、俺が考えている事が、実際本当にリボーンに当てはまっているか、と聞かれたら。どうかなってかんじだけど。でも、俺はそう思う。もう何年も彼から、学んできて。


「綱吉。で、何処で止めれば良いの?」
「…特に無いです。適当に渋滞抜けるまで走ってください」
「本気で目的無いんだね」


呆れたように、まだまだ続く渋滞を見やって、目線を助手席のボスに写した。相変わらず、目は景色を追ったまま。…随分と、深刻な表情をしていた。


「……さっきから、何見てるの」
「景色」
「見れば分かるよ。…何かあるの?」
「特に無いんですけど、なんとなくです」


普通なら、ふざけて聞こえるセリフも、ドン・ボンゴレが言うと確かな確信になる。雲雀は小さく溜息をついて、まだまだ先の長い渋滞にうんざりしたように溜息をついた。
…本当なら、こんなところにいちゃだけなんだけどね。多分、獄寺くんが帰ってきたら、殆ど終わっていない仕事に呆れるだろう(まあそれでも獄寺くんは甘いから、手伝ってくれるだろうけどね)。老若男女、子連れにカップル。様々な人たちが闊歩する混雑した道。ここにどれだけの人たちが居るんだろう。…一人一人、それぞれの人生があって、それぞれの物語があるのだ。 ふと、どこにでも居そうなシンプルなワンピースを着た、美しい女性が目に入った。一瞬、向こうからはスモークガラスで見えないはずなのに、目があった気がした。それも、流れ出した景色ですぐに視界の端へ移動する。…一瞬、そのひっかかった美女の顔を頭に思い浮かべた。と、同時に。


「雲雀さんは待機してて!」


鋭い声で指示を出す。渋滞で先ほどからまったく動かない車の扉を勢いよく空けて、走り出した。雲雀が驚いたように、開けっ放しになった扉を見る。人ごみの中に埋もれた沢田を、暫し目で追うも、すぐに見失ってしまった。…後ろからのクラクションで気がついて、開けっ放しになった扉をしめ、緩やかに発進させる。
沢田は、キョロキョロと雑踏の中で視線をさまよわせた。…一瞬だけだった。、を見たのは。でも、俺が見間違うはずが無い。どこにでもいそうな、ワンピースを着た、美しい女性。間違いなく、リボーン、だ。
あっというまに雑踏にまぎれて後を追うことが不可能になった。沢田は、少し歩いて見つからないことを悟ると、さっきの車へ戻る。 少し進んだ車の扉を開け、困惑顔の雲雀に小さく笑って見せた。


「リボーンはまだ、この街にいるよ」
「………見つけたの」
「変装してたけどね。俺が見間違うわけないし」


言い切って、ふかふかした背もたれに身を預けた。…リボーンが、いた。
何かの買い物の途中だったのだろうか。きっと向こうも、俺が気付いた事に、気付いたのだろう。あっとうまに人ごみにまぎれてしまった。すぐに徹底的に捜索を始めよう。でも、このまま捜索せずに、野放しにしといてあげたい気持ちがあるのも確かなんだけど。なんだか複雑な気分だなあ。なんだか、見つけた、より、見つけてしまったってかんじ。
表情で読み取ったのか、雲雀が少し遠慮がちに口を開いた。


「捜索、するの」
「…今、あそこを徹底捜索したら一般人に迷惑がかかります。それに、そう簡単にリボーンがつかまってくれるわけもないし」
「じゃあ、どうするの」
「どうしようか…どうすればいいと思う?」


まっすぐに、雲雀の真っ黒な瞳をみて(ああなんだかリボーンの目にそっくりだ)、問いかける。雲雀がまた呆れたように溜息をついて、前を見た。


「ボスが決めれば」
「……ボス、なんて呼ばれたら、捜索するしかないでしょ」
「さあね、勝手にすればいい。…別に、僕は彼と牛がどうなろうがそこまで興味ないしね」
「いじわるな言い方ですね」
「まあ、彼が死んでくれちゃ、ちょっと困るかな。まだ彼に勝ってないしね」


…執念だなあ。
雲雀さんって案外あっさりしてるように感じるのに。虚空を睨んで、少し思案した後、溜息をついた。


「適当にここから抜け出して、アジトに戻ってください」
「探すんだ」
「…そうするしかないですし?」


困ったように笑って、足を組んだ。少し窓を開け、煙草を取り出す。


「綱吉が吸うなんて珍しいね」
「なんとなく、そんな気分なんだよ」


深呼吸をするように、肺に深くニコチンを取り入れる。
銘柄は、リボーンと同じ。










































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