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「…………オメルタを、破った?」


流暢なイタリア語で沢田が一向に開かなかった口を開く。不快そうに眉を寄せて、ボヴィーノの幹部数人を斜め上から見あげた。右隣に立つ獄寺が身を屈めて何事か耳打ちする。こちらもまた疑わしげな顔だ。


「はい……襲撃の件ですが、奴らは幹部とボスしか知りえない執務室への抜け道を使いました。……もちろん、ランボも知っている抜け道です。状況から見ても…ランボがオメルタを破ったとしか」
「……それ以外には考えられない?」
「ええ、ボスは目を覚まされませんし、どうすればいいか・・・」


沢田の倍は歳を取っていそうな体格の良い男が、青白い顔をして椅子に座ったままの沢田に跪いた。沢田は困ったようにハチミツ色の髪の毛をぐしゃりとかき回して、右隣の獄寺に耳打ちをする。やはりリボーンは我冠せず、と少し離れたところで事の成り行きを無表情に徹したまま見ていた。普段ならばまっさきに動いて、問題を解決するボンゴレの死神は、今回の問題には関係しない事に決めたらしい。隈が浮かんだ顔には何の表情も見られない。


「ランボは、早ければ今日中に目を覚ますみたいだから本人に直接聞くしかない」
「……もし、オメルタを破っていたら、」


同じように青白い顔をした幹部の一人がぼそりと呟く。沢田が鋭い視線を向けた。


「それは、ドン・ボヴィーノが決めることだ……もし、ランボがボンゴレの情報も漏らしていたら、俺も行動を起こす」
「それは…」


ざわざわ、と集まったボヴィーノ構成員達が顔を見合す。みな総じて青白い疲れきった顔をしていた。ほとんどのものが包帯を巻いている。リボーンは帽子を深く被りなおし、長いため息をついた。
………馬鹿な奴もいたもんだ
三週間のあいだにどれほど酷い拷問されたかは知らねーが。……オメルタを破るとは。状況から見てオメルタを破ったことは確実。ボヴィーノもあのアホ牛は死ぬほどかわいがってたからな。目を覚ますのを待つまでもなく、普通なら無理やり叩き起こされる所だ(そこがまだ甘めぇっつてんだダメツナ)。まあツナもあのアホ牛だから、そこまで極端に行動は起こさねーと思うが。………ああ、馬鹿だ。馬鹿すぎる。オメルタを破るなんて。

オメルタを破ったものの末路は、一般人ですら知ってる。…マフィアならなおさら。
その末路を語ることすら憚れるほどの仕打ちを受ける、だからこそ掟に縛られるマフィアは強い存在だ(ああなんて皮肉)。目を覚ましたら、聞いてやろう。ひとことあのアホ牛と口を聞けばこの苛立ちも消える気がした。
ツナも、アホ牛がオメルタを破ったと考えているらしい。獄寺と小声でしきりと何か話している。アホ牛が漏らした情報がボヴィーノのものだけならいいが、もしボンゴレの情報をも喋っていたら。…ツナも容赦はしないだろう(むしろできねーといったほうがいいのか)。掟は絶対だ、そして教え込んだのは俺。
















































「獄寺くんはどう思う」


屈みこんだ獄寺の耳にぼそり、と耳打ち。少し獄寺が唇を結んで、考えあぐねているような顔をした、が、直ぐに小さな声で口を開く。


「……俺も、ランボがオメルタを破ったとしか考えられません」
「だよね。でもランボがオメルタを破るなんて……ボヴィーノの情報だけかな」
「まだ分かりませんが、もしあいつが破ったとなるとどれだけの情報を喋ったのか、吐かせる必要があります」
「………」


深いため息をついて、少し横を向いた。不健康な顔をした黒衣の青年が目に映る。まったくの無表情だ。
ああ、もう。 ぐしゃり、とまた頭をかいて(どうやら癖らしい)ため息をつく。獄寺が気遣うような視線を向けた。


「リボーンさん、今回の件にまったく関わらないおつもりでしょうか」
「だろうね……まったく」


恨みがましい目を、マネキンのように整った(あるいは整いすぎて生気が感じられない)顔の青年に向けた。ほどなくしてリボーンが視線に気付く。睨むような視線を返した後、そっぽを向いた。
……正直じゃないんだから。
リボーンの気性は知り尽くしている、伊達に10年以上一緒に居たわけではない。完全無欠、最強無敵、唯我独尊の女王様。人間としての素質は完璧(性格面では問題はあるけれど)、ほとんど全ての事をそつなくこなす最強のヒットマン。彼の唯一の弱点は、プライドが高すぎること。
今回の件だって、リボーンが妙な意地を張らなければ、加害者は直ぐに見つかるのだ。リボーンも、まあ俺が命令をだせば動かざるを得ないだろうけどね。とりあえず、大変な事になってきた。ランボが拷問されて見つかった時から、可能性としては考えていたけど、一番嫌な可能性として。
オメルタを破った構成員、たとえそれが誰であろうとも(ボスであろうと)凄惨な仕打ちを受け、捨てられる。例えそれが拷問を受けた後の幼いころから面倒を見てきた、弟のような存在であるランボでも。
過去に一度だけ、ボンゴレの情報を漏らした奴がいた。……あのときの事は、記憶に濃く焼きついている(おそらく一生)。大半の凄惨な仕打ちはほぼ全てリボーンが行った。最後に殺したのは、俺。
もう殺しぐらいでどうこう言うくらいの子供じゃないけど、あれは酷かったと思う。
全身をズタズタに切りきざまれ、腸がはみ出した状態、手足が無くて……少し上の役職についていた、女。マフィアは女を本当に大事にする、……それでも、その女でさえオメルタを破るとああいう風になるのだ。
ああ、嫌なことを思い出してしまった。
苦虫を噛み潰したような顔をした後、また威厳に満ちたボンゴレボスに相応しい顔を作る。


「ドン・ボヴィーノの手術が無事終了いたしました」


平坦な口調で、医師が深々と俺に頭を下げた。……頭を下げるべきなのは俺じゃなくて、ボヴィーノの人たちだと思うんだけどな。
脳の隅っこで少しそんなことを思う、それでも地位は格別に俺のほうが高いわけであって。それが俺も当たり前になっている。
口を開かず、頷いた。


「一命は取り留めましたが、いつ容態が悪化するか分からない状況です」
「……そう、ランボはまだ目覚まさない?」
「はい」


ざわざわと再びボヴィーノの構成員達が顔を見合わせる。今度は全員の顔に安堵の色がハッキリと現れた。
リボーンが片方の眉を器用に上げて、また無表情に戻る。
どうするのかな……、
沢田はリボーンを少し視界にいれ(よく見ると返り血がこびり付いている)、頭を掻いた。
もし、ランボが本当にオメルタを破っていたら、どうするつもりだろう。少し眉を寄せて思案……多分、何も行動はおこさないだろう。きっとリボーンは今自分の考えてることも、よく分かっていないはずだから。それに、プライドが高いリボーンがランボについて行動を起こすとは考えにくいし。
でも、
何か嫌な感じがする、


「獄寺くん」


またぼそり、と耳打ち


「はい」
「……しばらく、リボーンの行動を監視しておいて」
「リボーンさんの…ですか?」


獄寺くんが俺の目をまっすぐ見る。綺麗なグリーンの瞳が困惑の色を映していた。


「そんなしっかりはしなくていいんだ…何してるか把握するぐらいの監視」
「………分かりました、でも」
「うん、リボーンならすぐに気付くと思う」
「では、何故?今リボーンさんを監視する理由が…」
「何か嫌な予感がするんだよねー、よろしく」


予感、
その一言を聞いて獄寺の眼から困惑の色が無くなった。ボンゴレの超直感、これほど信用されているものは無い。


「分かりました。すぐに手配します」


沢田は、にこりと口だけで微笑って、立ち上がった。
……ゆるい監視など直ぐにリボーンが気が付くだろうけど。でも、もし万が一何か行動を起こすなら、牽制にはなるだろう。
歩き出した俺に、様々な人が頭を下げた、何も感じないのは俺が麻痺してるからだろう。口に端を吊り上げて、眼もくれずに歩いていく。
気が付くと、さっきまで壁にもたれ掛かっていたリボーンがいなくなっていた。
俺が監視をつけた事が分かったら、怒るだろうなあ










































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