×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
























霖雨が続いている。
いつものざあああという雨音よりは大分優しいしとしとという音と共に空から鉛色が降ってくる。俺はひどく憂鬱な気分で、肌に纏わりつく湿気との戦いを放棄し、ベッドに寝転がったまま、日記を読んでいた。
ふと、こんな日はレインマンが存在したのかさえ分からなくなるから、俺は何度も何度も自分自身あきれるくらい汚い筆跡のノートを読み返す。…レインマン、じゃなくて。ゴクデラ、くん。お願いだからそこから顔をだして。
日記の一番最後のページには、「ゴクデラハヤト」とでかでかと書いてある。その下に、ハテナマーク。シャマルがどうして知ってるの?と。俺の拙い頭じゃ、全然理由が思い浮かばなくて、あの人が何をやってる人なのか、シスターに聞きに言っても、学者。としか教えてもらえなかった。案外シスターも知らないんじゃないの?なんて少しイライラした気持ちで、そう考えた。 でも、"何か聞きたかったら連絡してくれ"と書いてあるメモの、長ったらしい携帯番号に連絡する気はどうしても起きなかった。一番初めのページ(ああ、よかった俺この日記つけてて!)に、彼に会ったときの印象が書いてあった。"何かに追われてるみたいに"そう。だから、もしかしたらシャマルが追いかけてるのかもしれない。
何故?
…学者。シャマルは悪の組織の学者で、彼は改造人間!


はあ、と深い溜息を吐く。小学生じゃないんだから、あ、でもシャマルに悪の組織っていうのは随分会ってるな。無精ひげによれよれの白衣、どろりとした目。幼いころに見た、悪の組織の学者となんか被る。…じゃなくて!ああ、こんなことになるんだったら、ちゃんと知っておけばよかった。
ゴクデラくんの事とか。ああ、なんか慣れない。第一、これが本当の名前かも分かんないんだよね。でもなんとなく、ゴクデラハヤトって言う名前はレインマンの本当の名前だって分かる。だって、あまりにも彼を連想する名前だから。名前は人を表すって本当だったんだ!


「ゴクデラくん」


ぽつりと呟くと、静かな雨が返事をした。もう、あの最後の雨の日から一ヶ月はたってる。でも、でも俺は相変わらず後悔しっぱなしで、最近は毎日夢を見る。夢の中で彼はいつもどしゃ降りの中、泣いてて、でも笑ってて、俺はそのくしゃくしゃの顔をした彼に近づこうとするんだけど、やっぱり定番の悪夢で俺は絶対にたどり着けない。それから、彼はまた泣いているような笑ってるような顔をして、俺に手を振る。それから背中を向けて、走り去ってしまうのだ。
朝起きると俺は泣いている。いつも。
涙腺が緩くなってる、馬鹿みたい。俺。本当に、本当に会いたいのに。しとしと、と霖雨が降る。
ゴクデラくんゴクデラくんゴクデラくん。…レインマン。
ふと思いついて、引き出しの中に封じ込めた綺麗な緑のシャーペンを取り出そうと身を起こす。半分開けた窓に、一瞬彼の顔が見えた気がしてどきりと心臓が波打った。薄暗い、灰青色が緑と綺麗に調和しているだけで、彼の顔は幻だったと知る。もし、俺が忙しければこんな風に落ち込むこともなかったかも知れない。でも、良いのか悪いのか俺は合い変わらずじっとりとした汗をかきながらベッドに寝転がっているだけ。考えるのは君の事だけ。
何時もはほどんとやらない夏休みの宿題も、全部終わってしまった。(合ってるかどうかは分からないけれど)小さい引き出しの上から二番目。あけると、物が入っていない、真新しい木の匂いが立ち込めた。ころころと緑のシャーペンが転がってきて、それを手に取る。やっぱり考えるのは彼の笑顔。
鼻の奥がツンと痛くなった。ああだめだほんとに俺涙腺弱い。


生ぬるい湿気を運んでくる風。
いつの間にか暗くなっていて、あと少しで完璧な夜になってしまう束の間の美しさが、半分あけた窓の外に見えた。ほんの少し、の距離に雑木林。緑と黒が綺麗に雨と調和していて、あまりに幻想的な光景に一瞬、止まる。


雑木林で、何かが動いた。…気がした。


ドクン、と信じられないくらい心臓が跳ねた。もう一度、跳ねる。すう、と頭から血が抜けるような気分。直ぐに右手で強く目を擦るって、もう一度見る。擦った生で一瞬ブレた視界が合わさって、何時もと同じ雑木林が見えた。
でも、でも。もう暗くなる、幻想的な光景はおしまいだ。俺は何度も彼の幻をこの窓から見たから、今度もその類だろう。そう納得させようとするけど、どうしても動悸がおさまらない。俺は今、見たんだ。雑木林の向こうで、誰かが動いた。人影を確かに見た。
…………灰色、の頭?















>>11



拍手