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ゴールディロックスと良識ある大人





子供は自分が子供であることを利用する。
大人が考える子供とはまったくの押し付けがましい理想像で、実際子供は大人がそう期待するよりは遥かに聡く、同時に愚かだ。子供だから許される、と本能に刻み込まれているその言葉に忠実。大人は、自分にもそんな時代があったという事を長い時間、回りが求めるままに常識という服と身につけるうちに、その不要で汚い記憶と忘却の彼方、その隅っこにあるゴミ箱にぐしゃぐしゃと丸めて捨ててしまうのだろう。
恐ろしいのは、子供は利用している事すら意識せずに、それを無意識でやってのけるところだ。
無意識だからこそ、まだ許される。それを可愛いと思う母性や父性が、同じく本能に刻み込まれているのだから。


ふう、と溜息を吐き、ひどく不快な気分にさせられていることを自覚しまたそれに不快を覚える。実際、こんな事を考えている俺は奴よりも四つ年下で、問題の目の前に居る奴はもう子供とは呼べそうで呼べない年齢の、(外見的には、大人と言ってもいい気がする)男なのだが。
真っ黒な苦いコーヒーを口に運ぶ、左斜め前から気持ち悪いほどの視線を感じ続けているのだが、無視する。目の端で嫌々ながらその存在を確認すると、奴はでかいソファの端っこにあろうことか体育座りで、真っ白な膝に顎を乗せ、子供の気持ち悪くなるほどまっすぐで無遠慮な目でこちらをずっと見ている。
……その仕草からは、こいつがまだ"子供"であることは明白なのだが。外見はもう15歳という実年齢を通り越している。明らかに。そして、何よりも誰よりも不愉快だ。


「リボーンはよくコーヒーなんて飲めるよね」


ゆっくりと、なんとなく舌足らずな間延びした声。俺は絶対飲めないよ、苦いしねー、なんて言ってころころと笑った。相変わらず膝を抱え込んだまま、目を大きく開いて上目遣いで俺の一挙一動をひたすらに目で追う。
その行動は、もう病的だと言ってしまえる。俺には。
大人というのは、周りが求めるもので、言ってしまえば、子供を求められる時もある。だた、その期間は常識的に定められていて、このアホ牛の場合はその期間が信じられないくらい先延ばしにされているという事だ。言うならば、まわりが甘すぎる。…そして、誰も気が付かない。いつからか、こいつは自分が子供である事を求められている、と自覚する上で。子供で有り続けた。異常だ、異常すぎる。
異常と言えば、自分を取り巻く環境も異常だった。俺は母親の胎内から生れ落ちた時から、大人である事を求められ続けた。こいつとは正反対で。だから、俺がこの男にこれほどまでに不快な感情を抱くのは、その環境の相違が大半をしめている。ような気がする。
ならば俺はその正反対な環境が羨ましいかと言えば、それは自分では答えが出せない。


「ねえリボーンは案外お菓子好きだよね」


意味のないことをペラペラと喋りだす。相変わらず緩慢な甘ったるい口調で。
甘いものが好きなくせによくそんな苦いコーヒーなんて飲めるよね、俺は牛乳が好物だし甘いものはだいすきだしねえそういえば俺にお菓子はないの?
なんて。
じい、と見開いた瞳は相変わらず子供のそれと同じで、遠慮の欠片もない。無邪気、を絵に描いたような視線でころころと笑う。"俺にお菓子はないの?"なんて。自分にお菓子が与えられる事が当たり前だと思っているから、そんなセリフがでてくる。
もちろん、こいつは知っているはずだ。自分が故意に"子供"をやっている事を俺が知っていることぐらい。なら、この状況はまったくの茶番で三文芝居にもなりゃしねえ。目の前の大根役者を睨む。当の本人は、ころころとまた膝を抱えたまま笑って、いかにも子供のようにやっと俺のほう向いたなんて笑うのだ。子供好きならば、思わず構いたくなるくらいの完璧すぎていっそ吐き気がするほどの笑顔で。


「……帰れ」
「あ、口きいた」


大抵の子供ならそれだけで泣きべそをかいて逃げ出すであろう、殺気を飛ばして。それでも気にしないと言う風に、アホ牛はころころと笑ってまた膝を強く抱え込んだ。いやだよー、なんて口を尖らせて、頬を膨らませる。無邪気すぎて透き通った、緑の瞳がやけに狂気染みているような気がして、嫌悪感に産毛が逆立った。
子供であるはずの俺の外見、年齢と。子供とは呼べない中途半端な外見、年齢を持っているこのやけに倒錯した状況をどう打破するべきだ?


「やれやれ、俺はまだ子供なんだよ?そんで、お前は大人」


大人の真似事をする子供、という言葉が脳裏に浮かんだ。俺の考えている事を見透かしたようにころころとまた笑う。きつく睨んだ俺を、楽しげに緑の大きな瞳が映した。剥き出しの膝小僧にまた顎を乗せて、上目遣い。気持ちが悪い。


「…………ああ、まったくもってそうだろうな」
「珍しく俺に賛同するの?」


否定されるのを待っていたように、残念そうに答える。勝手なもの言い、その場を自分の物にしてしまう身勝手さ。無遠慮な眼差しは相変わらず気持ち悪い。昼下がりの気だるい喧騒が窓越しにくぐもって聞こえる。聞き古したレコードが、いい加減聞き飽きたメロディを何回も繰り返し鳴らしていた。


「つまんないの」
「俺は他の奴みてーに子守をする気はねえ。…さっさと帰れよ、バンビーノ」
「あははは、いやだよ。俺はリボーンすきだもん」


またころころと耳障りに笑う。思わず、その殺し屋にしてはあり得ないくらい無防備すぎる額を撃ちぬきたくなった。やろうと思えばコンマ0.2秒。ただ、その後この滑稽でどこまでも無邪気で狡猾なバカを溺愛する、これまたバカな大人たちに何を言われるか(もしくはされるか)分かったものではない。それを見越して、こいつは毎度俺の前に陣取り、その無邪気で狂気的な瞳で俺を無遠慮に見上げるのだ。
ころころ、と何がおかしいのか尚も笑い声を上げる。膝においていた顎を緩慢な動作で持ち上げ、首をかくんと完璧な角度で傾けた。形の良い薄い唇が開き、その口から赤い舌がちろりと見える。


「クッキーをちょうだい?とってもおいしくて何枚も何枚も食べたくなるようなクッキーがほしいなあ」










































ランボは多分子供である事を存分に利用していると思う
リボーンは子供になれなかったことに無意識で嫉妬しているからランボが嫌いとか
ランボは結構わざと子供のフリしてるんだろうなあなんて
すごく明るい昼下がりなかんじのゆったりした曲を聞きながら読むとそんなイメージになる
ゴールディロックスっていうのは三匹の小熊っていう欧米では割かしポピュラーな童話にでてくる女の子の名前



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