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冷たい人












「なーヒバリィ、セックスしよーぜ」


纏わり付く腕を無理やり解いても、また苦しいくらいの力で後ろから抱きすくめられる。小さく舌打ちをして、無視を決め込んだ。(ああもう目障りだ)


「…………」
「なーなー、ヒバリィ」
「………今日も変態だね」
「おー、俺はへんたいだぜー?」


嫌に間延びした声で喋る、後ろにいるので、その表情はよく分からない。(想像はつくけれど)……なんだっていうんだ。鬱陶しい。目の前の書類に目を落とし、てきぱきと片付けていく。首筋に舌が這う感触。ぞくり、と不快な感覚を覚えた。


「君、仕事は」
「あー、今日は休みー。なあヒバリィ、セックスしよ?」
「…………嫌だね」
「えー、何でー?」



いつも以上に間延びした声にイライラする。ぴしゃ、と湿った音がした。


「いい加減それやめてくれない、気持ち悪いんだけど」
「うわ、ひでえなあ」


乾いた声でわらう。一本調子の声、ああもう鬱陶しい。なんだって僕のところに来るわけ。首を舐めるのをやめたらしい、相変わらず後ろから僕に手を回したまま、その手に息苦しくなるほどの力が加わった。(いつもなら、トンファーで一撃お見舞いしてあげるところだけど)


「苦しいんだけど」
「…おー、悪りぃなー」


と、いいつつ力は一向に緩められる気配はない。むしろ、更に増した気がする。ぎゅう、と視界の半分に馬鹿の鍛えて日に焼けた腕が見えた。重たい。背中にほとんどの体重が乗ってくる。


「悪いと思うんだったら、どいてくれる。仕事できない」
「……あー、今、無理」


そういって、ワイシャツに手を伸ばした。しゅる、とネクタイを器用に解く音がする。ボタンに手が掛かった、ひとつ。ふたつ、のところで馬鹿の手を思い切り掴んで静止する。


「いい加減して」


殺気を孕ませた声で鋭く言う。後ろは振り返らない。馬鹿の今の表情など、見るだけ損だから。


「ヤらせてくれんのかと思ったのになー」
「そんなに誰かとセックスしたいなら、愛人でも娼婦でも腐るほど居るだろう」
「あー、なんかヒバリじゃねぇと今無理だわ」
「………馬鹿じゃないの」


はは、ひでえといってまた乾いた声でわらう。その声に感情はない。


「出て行ってくれる、本気で邪魔」
「…………ヒバリィ」


苦しい。首に馬鹿の腕が食い込む。


「お前はどこにも行かねえよなあ」
「…行くに決まってるでしょ、馬鹿じゃないの」
「行くなよー?」
「苦しいんだけど」


ぎゅうう、ああ、苦しい。それでも振りほどけない自分にまた小さく舌打ちをした。こんなこと、コイツはそれこそ大量に今まで人殺しをしてきたわけで。そんな事で落ち込んでるなんて甚だ馬鹿らしい。


「………なあヒバリィ、やっぱセックスしよ」
「しない」
「ヒバリィ、お前ここに居るよなあ」
「居ないよ」
「……ヒバリィ」


次第に震えていく声に、耳を塞ぎたくなった。手が邪魔でできない。さっさと出て行って欲しい、いい加減にして。ああもう鬱陶しくて仕様がない!


「……親父が死んだ」


はははは、乾いたわらいがまた響く。


「ふうん、それはご愁傷様。ほどいてくれない?」
「俺、葬式で泣かなかったんだぜ?冷めてえ人間だよなあ」
「そうだね」
「……だよなあ」


苦しい、苦しい。どうして僕がこいつに付き合ってるんだ?馬鹿じゃないの、こいつも僕も。


「泣きたくても泣けねえんだ、やべえよなあ」
「馬鹿じゃないの」
「あー、やっぱり?……死んだんだよなー」
「死んだよ」
「ヒバリィ、俺どうしよー」
「どうしようもないんじゃない」


息ができない。(事はないけど)本気で苦しい。…視界の端に、自分自身の腕に血が滲むほど爪を立てている光景が写った。


「セックスしよーぜ」
「嫌だね」
「キス」
「嫌」
「じゃあ、ずっとこのまま」
「できるなら早く離して」
「あー、無理かも」


頭に、ぽとりと冷たさを感じる。ぽとり、ともうひとつ。…ああ、鬱陶しい。丁度目の前にあった新聞が取れそうだったので、手を伸ばした。あと寸是のところで届かない。また舌打ち。


「ヒバリィ」
「…何」
「ヒバリ」
「だから何」
「何でもねえ」


掠れた声が頭上から響く。
押し殺した嗚咽が聞こえた。…言い知れぬ感情。僕は今何を考えてる?ああ馬鹿らしい、馬鹿じゃないの。


「山本」
「…………あー、名前呼んだのってすっげえ久しぶりじゃねー?」
「どいて」
「もっかい呼んでくれたらなあ」
「馬鹿なこと言わないで」
「馬鹿だからなあ、冷めてえ人間だしなあ」


ははは、と今度は少し感情の入った笑い声が聞こえた。腕の力が少し緩む。(やっと息ができる)


「……少なくとも、」
「なんだー?」
「僕よりは冷たい人間じゃないんじゃない、…知らないけど」
「…やっぱ、セックスし、」
「嫌だ」


つまんねえの、なんて笑いながら鼻を啜る音がした。汚い。僕の頭の上で気持ち悪い事しないでほしい。


「もういいのなら早くどいて」
「嫌、もうちょっとこのまま」


…馬鹿?





































標的141 白蘭の剛が死んだってのでパロ。
どうしても書きたかった。山本下品orz。自己満足。





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